アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

役者と素顔

人生は映画の様なもので、映画は人生の様なものです。映画の主人公に感情移入し、物語に埋没するのは子供の観方です。人生も同様で自分自身に感情移入し、自分の物語に埋没して生きる人は子供です。大人は映画を観ながら、例えば監督その人に対峙します。人生にとって監督に相当するものは何でしょう?

映画の登場人物は役者の演技です。登場人物にとって「役者の素顔」とはどんな意味があるのか?人生においても自分は自分の役を演じます。演じる自分にとって「役者の素顔」とは何か?それは他人に見せない自分の素顔などではありません。他人に対して演じることは、自分に対して演じることと同意です。

自己愛、自己満足、自己憐憫、に囚われる人と、映画の登場人物に感情移入し自己同一化して観る人は似ています。

ネタバレは言いませんが、探偵小説の元祖であるポーの『モルグ街の殺人事件』ですが、その真犯人に色んな意味で仰天しました。一つはポーの透徹力で、その犯人とはある意味で今日の原発事故の真犯人と同一なのです。とても恐ろしい犯人で、ポーはこの小説で未来の我々にまで警鐘を鳴らしているのです。