アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

判断と事実

●人間が放漫になれるのは、飢えていないときだけである。:山本七平

自分の意思に反して手が勝手に動く、そしててが動くため、その手が逆に自分を殺してしまう、という奇妙な経験を、私はすでにしていた。:山本七平

人間には「武器を保持すると平和でいられる」という、実に矛盾した、そして非常に困った要素がある。:山本七平

人々を潜在的に突き動かすのは「飢餓の恐怖」です。飢餓が恐ろしいがゆえに、人々はそれを潜在化させ、あたかもそんな物がこの世に無いかのように振る舞うのです。飢餓はある面では死よりも恐ろしく、だからこそより強い忘却力が作用するのです。様々な宗教に断食が存在する意味は、そこにあります。

「世の中が信じられない状態の言葉」という点で、軍隊用語と哲学とは共通している、という山本七平の指摘は流石です!

「事実」と「判断」とを容易に結びつけること無く、「事実」と「判断」とを峻別しなければ生きてゆけない世界、それが戦争であり、哲学です。

「判断」と、「事実」の区別が付かない人は、自分の判断が事実となる言わば神のごとき万能感のうちにあります。