アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

空論と魔力

あらゆる理論は実際に的中しなければ無意味です。
しかし、多くの人は的中しない理論の、その辻褄合わせの内に安住しながら生きています。
理論の実際への的中と、理論の整合性とを、巧妙にすり替え安心しているのです。

理論的に整合性があることと、理論が実際に的中する事とは、本来は全く無関係です。
理屈で説明出来ないにもかかわらず、実際に起きている事はごまんとあります。
ところが多くの人は、理論に整合性のあることが、その理論が実際に的中する証拠であると、取り違えをするのです。

実際に的中しない理論の辻褄合わせに安住するのは、一般の人々の中にも、インテリと言われている人々の中にも、非常に多くの割合で存在していると推測されます。
フッサールが「生活世界」の概念で指摘したことの一つは、これではないでしょうか?

難解な文章を恐れる必要はありません。
難解な文章には、ただ難解なだけで、実際の的中への考慮が希薄な偽物と、そうではない本物の二種類があるのです。
難解なフリをした偽物があると知るだけで、恐れはかなり軽減されます。

具体性だけに意味があり、空論は無意味なのです。
当たり前のことです。
しかし空論には、人々の目を具体性から逸らし、安心させる魔力があるのです。
空論には魔力があることを意識すれば、これに惑わされることはありません。
確実なのは理論では無く具体性なのです。