アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

現象学と印象学

印象派の画集を見ながら、ふと「現象学」に対して「印象学」と言うのを考えてみたのですが、「印象」を辞書で引くと、下記のようにありました。

 

1 人間の心に対象が与える直接的な感じ。また、強く感じて忘れられないこと。
2 美学で、対象が人間の精神に直接与える感覚的あるいは情熱的な影響。

 

 

つまり、印象とは直接性なのですが、これに対し学問とは間接性によって事物を対象化する行為であって、その意味で「印象学」という学問は成立しないのです。逆に言えば学問が堕落すると印象学となり、自分の直接性に依拠しながら好き勝手なことを主張することになるのです。

例えば、岡本太郎の『今日の芸術』も印象学にすぎないし、赤瀬川原平の『半芸術アンパン』も『芸術原論』も印象学に過ぎないのです。そして、各自の印象学から独自の主義主張が生まれるのです。それらは政治的手段、デマゴーグであって、学問的探求とはベクトルが異なるのです。