アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

現象学と還元主義

現象学とは還元主義です。いや還元主義を徹底した結果、還元主義を超越し「裏返った」のが現象学です。現象学以前の還元主義はあくまで「自然的態度」の範囲内での還元であり、自然的態度における反省に過ぎませんでした。現象学的還元は、自然的態度を丸ごと裏返し、従来の還元主義を乗り超えるのです。

フッサール現象学第二次世界大戦前の、その意味で古い哲学だと言えます。しかしこの現象学を本当の意味でマスターできる者は少なく、それをするには人間に普遍的な「自然的態度」を「丸ごと裏返す」ことが必要であり、その意味でいつの時代の誰にとっても「新しい哲学」として立ち現れてくるのです。

例えばあらゆる物質を原子に還元しようとも、空間や時間や人間精神といった物質でないものは原子には還元できません。ところが現象科学的還元は、あらゆる物質も、原子も、空間も時間も人間精神も、目に見えるものも、頭に浮かぶ空想も、ありのあらゆる事物が「現象」として還元するのです。