アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

目の前の事象と目の後ろ側

現象学的還元をマスターすると(私はまだまだですが)、「生活世界」が対象化されます。自然で素朴な感覚で生きる人は、生活世界に埋没し、生活世界を対象化できません。

自然で素朴な感覚で生きる人は「目の前の事象」に囚われて生活世界を見失っています。生活世界は実に「目の後ろ側」に広大な領域として広がっているのです。現象学的還元をマスターすれば、目の後ろ側の生活世界が目の前方へと圧縮され、「目の前の事象」と同等に対象化されるようになるのです。

つまり、自然で素朴な感覚で生きる人には決定的な「死角」が存在するのです。これに対し現象学的還元にはその意味での「死角」はありません。なぜなら現象学的還元は「すべて」を還元するからです。

鏡を見ると、ふだん自分からは見えない「目の後ろ側」を見ることが出来ます。また同時にふだん自分からは見えない「自分の顔」を見ることが出来ます。この見えない領域「死角」が可視化された世界が、現象学的還元によって生じる世界です。哲学者は哲学者でない人と全く別の世界を見ているのです。

■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■

フッサール現象学の理念』ですが、ようやく3回目読み終わりました。しかし相変わらず内容を十分に理解したとは言えず、従って「読んだ」とは充分に言えず、ですから再び最初から読んでいきます(笑)

同時に、昔読んだ竹田青嗣『はじめての現象学』も再読してみてるのですが、こちらはさすが入門書のプロによる本だけあって、いろいろな仕掛けがしてあって面白い本です。