アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

『芸術への道』抜き書き2

●芸術は、自然と対置されても確固たる存在を主張するものでなければならないが、それは自然に対して固有な何かを意味してはじめて可能になるのだ。#芸術への道

自己の作品を前にして動揺する画家の姿は洋の東西を問わず真に芸術家のものだ。だから彼らは二年も経てばかつての作品を見て「今だったらあれこれを別に描くだろう。私はもうとうにそれを越えているのだ」と述懐する筈である。多分それは技能が不足であったという自己否定の承認なのだ。#芸術への道

当然ながら、芸術家は形式を会得するために絶えず血のにじむ努力を重ねるものだ。ややもすると、偉大な芸術家にとってはそれはたやすいことだと考え勝ちだが、彼らとて決して例外ではない。例えばレオナルドにしても、着衣や手首のスケッチを何度も何度も描きなおしていたのである。#芸術への道

画家を虜にするのは、何はともあれ先ず線と面、量感と空間である。思想や情感や記憶像が最優先して彼を魅きつけることは手ない筈だ。彼を魅了する世界に最も基本的に関わって来るのはこうした空間的な性質のものである。#芸術への道

 

芸術は空虚な場に存在している訳はなく、一つの具体的な社会の中に在り、その社会は様々な要求をもって芸術家に迫っている。こうしたことは、芸術の歴史を見ると良くわかることであった。#芸術への道