アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

ガッツさんにもわかる哲学

www.nhk.or.jp

NHKに子供むけの哲学番組があり、ネットでも視聴できます。哲学を語るウサギの声がガッツ石松で、あのガッツさんでも分かる哲学というところに驚きがあります。監修は立教大学河野哲也教授で「哲学カフェ」を主宰されている方です。大人が見ても色々考えさせられます。
http://www.nhk.or.jp/sougou/q/?das_id=D0005180281_00000

色々考えさせられます、というのは実は私としてはこの番組内容は感心しないということなのですが、それだけに独自の「カラクリ」が見えてくる。これはオルテガの『大衆の反逆』的な、大衆による大衆のための哲学なわけです。

「何でも当たり前に思ってることに疑問を持って、自分の頭で考えよう。それこそが哲学だ。」という趣旨は一見もっともらしく思えるが、実は全く正反対で、哲学の趣旨の一つは「自分の頭で考えないこと」だと言えるのだ。

というのも人間とは非常に騙されやすい存在で、だから「自分の頭」で考えると結果的に「自分」に騙されてしまう。人はつい「自分」を信頼したくなるけれど、実は「自分」は自分を常に騙そうとし「自分」ほど信頼の置けない存在はない。その前提に立って思考するのが哲学なのだと、私自身は教えられた。

「自分」はどのように自分を騙すのか?それは人が「自分の頭で考えている」と思っている時、実は決して「自分の頭」で考えているわけではなく、そのように「自分」は自分を騙すのである。

端的に言えば、人が「自分の頭で考えている」と思っている時、実は「他人の頭」で考えているのである。だから人に「自分の頭」で考えた結果を問うと、大抵はどこかで聞いたことのあるような陳腐な内容を語るのである。