アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

洗脳のテクニック

私は特に「洗脳」の分野に詳しいわけではないのですが、しかしつい先日、その「洗脳のテクニック」の一端を垣間見る経験をしたのでした。

それはもうブロックしてしまった、私のFacebookコメント欄に出現した「荒らし氏」ですが、どうも私に「洗脳のテクニック」を仕掛けたのではないか?と後になってふと思えたのでした。

この「荒らし氏」は突然私のコメント欄に現れて、私の意見を頭ごなしに否定しながら、いわゆる「マウンティング」を仕掛けてきたのでした。

しかし私はそうした挑発に乗らずに、逆にこの「荒らし氏」に対して、彼の経歴についての質問をしてみたのでした。

そうしたところ、彼はいくつかの宗教セミナーに参加して、そのなかで「洗脳」される経験もしたそうで、しかし自分には洗脳は利かなかったと明かしてくれたのでした。

その後も彼の私に対する「マウンティング」は継続して、私はのらりくらりと交わしながら面倒くさくなって、このままヘンな人と関係を深めてもヘンに恨みを買って最悪刺し殺されるかも知れないと思い、ブロックさせていただいたのでした。

それで思い返すと、彼は自分が学んだ「洗脳のテクニック」を私に仕掛けようとしていたことに、思い当たったのでした。

とは言えこれはごく単純なテクニックで、実際に私には利かなかったし、Facebookのコメント欄でそれを仕掛けるのも難しかったかも知れません。

ただ彼と一対一で、あるいは複数の人達によって、気の弱い人がそれを仕掛けられたら、充分に「洗脳」の効果はあるだろうと思えたのでした。

それでその「洗脳のテクニック」ですが、まず相手の言うことを頭ごなしに全否定して、相手が反論してきたところでまたそれを全否定して、と言うことを繰り返すのです。

この場合、相手を否定するための言葉であれば何でも良くて、「理論的整合性」は全く無関係なのです。

理論的整合性を考えて、相手の矛盾を指摘しながら反論すると、レスポンスに時間がかかってしまうし、そもそも相手を「洗脳」するのに整合性も何も関係ないのです。

先の投稿で指摘した「ああ言えば上祐」の問答と同じく、嘘を適当に並べればぽんぽん言葉が出てくるわけで、そんな調子でどんどん相手を否定して追い詰めてゆくわけです。

これは戦争映画や漫画でも描かれる、軍隊に新兵が入ってくると、教官が新兵に質問し、その答えをことごとく全否定することでアイデンティティを崩壊させ、そして「軍人」に仕立てていく仕組みと基本的には同じです。

ただ、軍隊の場合は洗脳と言うより「社会的通過儀礼」として必要なことで、それを悪用したのが「洗脳のテクニック」だと言えるかも知れません。

そしてこの悪用されたところの「洗脳のテクニック」は、実のところ「効く人にはものすごく良く効く」けれども「効かない人にはまったく効かない」のがポイントです。

ですから本当の意味で巧妙な詐欺師は、「洗脳されやすい人」をうまく見つけ出すところから仕事を始めるわけです。

これはちょっとヘンな例えですが、私は昆虫写真家の海野和男先生の影響で「チョウの飛翔写真」というのを撮ろうと思って、カメラを持って飛んでいるチョウを必死に追いかけ回して、全く撮れないという時期があったのです。

ところが、海野先生の小諸アトリエにお邪魔して、一緒に写真を撮る機会に恵まれたことがあって、そうして海野先生の撮り方を見ていると、先生自身はほとんど動かずに、飛んでいるチョウをパッと見事に撮影されているのです。

そこで私はチョウの飛翔写真のコツは、闇雲にチョウを追いかけるのではなくて、まずは「撮りやすいチョウ」を見つけてそれを撮ることにあると、悟ったのです。

ですから詐欺師にしても、「詐欺に引っかかりにくい人」を相手にしても時間の無駄ですから、「詐欺に引っかかりやすい人」を見つけることから始めるのです。

「詐欺に引っかかりやすい人」を見つける方法はネット上ではいくらでもあって、スパムメッセージもその一つです。

つまり、普通の人が引っかからないようなバカバカしい内容の詐欺メールに何らかの反応をしてしまう人は、「カモ」として詐欺師のデータベースに登録されてしまうわけです。

そう考えると件の「荒らし氏」は洗脳を仕掛ける相手を全く間違えているわけで、かなり不気味で怖ろしいと言えるのです。