アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

文明と弱者

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なかなかに過激な放送がNHKで放映されて、賛否両論のようです。

それで私の意見としましては、まず文明以前の原始時代の人類は、過酷な自然環境の中を生きていて、だから障害者どころか少しでも弱い人間はバタバタと死んで行き、だから人口は現在にくらべて格段に少なかったのです。

しかし人類は農業とともに「文明」というシステムを発明し、その発展とともに人口を爆発的に増やして行きます。

つまり文明とは、自然環境では生き残れないような「弱い人間」を、安全で快適な人口環境によって「救済」するシステムなのです。

文明とは本来的に「弱者救済」のシステムで、このことは『ハンムラビ法典』にもはっきりと明記されています。

日本列島に稲作がもたらされる以前の縄文時代の人口は、最大で約26万人だったそうです。

これに対し、現在の日本の人口は1億2700万人だそうで、その数を比較するだけで、どれほど多くの人間が、現代文明の恩恵を受けているかが分かるのです。

そしていくら文明が進歩しても、自分が事故に遭ったり病気になったりして、障害者になる可能性はゼロではありません。

ですから、かつてのナチスのように障害者を単純に切り捨ててしまうと、人びとは根本のところで安心が得られず、つまり「文明」と言うものに信頼が置けなくなって、そのようにして文明は衰弱してゆくのです。

いったん衰弱した「文明」を復活させるのは実に難しいことで、それは現に文明的なものが衰弱してしまった地域を見ればよく分かることです。

ですからわれわれは、古代の昔から延々と築き上げてきた「文明」というシステムを、大事にしてゆかなければならないのです。