アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

愚者と自己愛

怠惰な人、怯える人、考えない人、狡い人、これらの人々にこそ愛情を注がなければならず、それこそが「自己愛」なのである。愚者を愛せない者は、自己もまた愚者である事から目を逸らし欺瞞を生きているに過ぎない。


貧乏人から這い上がった金持ちが貧乏人を憎むのは、精神が貧乏人のままであるからこそ自己の鏡像を憎むのだ。同じように、愚者から這い上がりこれを脱したと思っている者が愚者を憎むなら、その者は愚者に自分の姿を見てこれを憎んでいる。


愚かな人は悲しみに満ちている。愚かな自分が悲しみに満ちているように、愚かな他人もまた悲しみに満ちている。人は自らの悲しみを、自らに悟られないよう巧妙に隠蔽しながら、さらに悲しみを増す。悲しみは聖なるものであり、愛さなければならない。


自分の愚かさを憎む者は心が荒んでいる。他人の愚かさを憎む者は自分の愚かさから目を逸らしている。真に自分の愚かさを受け入れこれを愛する者は、あらゆる他人の愚かさを受け入れこれを愛する。