アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

モダニズムと伝統

モダニズムは断続的に継承されます。現代のモダニズムは古代文明における「農業革命」の継承です。

真に新しいものは同時に古いのです。なぜならプラトンが指摘したように、新しいものは古い記憶の想起としてもたらされるからです。この記憶は個人を超えた人類史的、生物史、宇宙史であり、人が誰でもこの世に生まれる際に、全てを忘却するその記憶です。

「真に新しいもの」と言った際の「真」と言うことにどれだけの価値があるのでしょうか?実のところ「真」にはそれほどの価値は無いのかも知れません。現に多くの人にとって、それは価値の無いものです。多くの人が「真」よりも大切なものを抱えているように思えます。それは何か⁈

「真」の対義語は何でしょうか?それが「真」より大切なものとされているのであれば「偽」ではなさそうです。「常識」はどうでしょう?デカルトは常識を「真に至る間の仮住まい」としましたが、現代の価値観では立派な邸宅は重苦しく、仮住まいの方が気軽でカジュアルで現代的なのです。

現代性が「過去も未来もない単なる現在として捉える意識」だとすれば、それは一つには「常識」ではないでしょうか?常識は時間とともに遷移し、常識の遷移が「流行」と表現されます。

時間の経過には「進化」と「遷移」の2種類があります。「現代性」や「新しさ」にもそれは当てはまります。

ボードレールによる現代性の特徴は、1未完性、2断片化、3全体性ないし意味の不在、4自己批評性、だそうです。素晴らしい!!

現代性の一つの特徴は「未完性」でした。戦前の東京がどれだけ進歩したとしに見えようとも、その大半は未完成品のハリボテで、それは戦後の現代に至るまで本質的に同じです。どれだけ科学技術が発達しようとも、どこまでもそれは未完成品でしかありません。

現代性の特徴の一つに未完性があるとすれば、核兵器の登場によってその意味での現代は終わったと言えます。核兵器の開発により、人類は一つのイデアに到達したのです。