アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

仲間褒めと暗黙の排除

人間は愚かです。なぜそう言えるのか?それは「理想の人間像」と言うイデアと比較して言っているのです。どんな現物も、イデアと比較すれば劣ります。

現代性の本質に意味はありません。意味の無い作品に意味の無いステイトメントが付属し、意味の無い評価が書かれるのです。

つまらない作品に対し「つまらない」となぜ言ってはいけないのか?それは条件によります。作家本人に向上心が無い場合、その作品に対し「つまらない」と言ってはいけないのです。その意味で、評論家は作家が何を望んでいるかをまず見極める必要があります。

そもそも「向上心」という概念自体が「古いモダニズム」の産物なのです。「向上心」で人を測ることは最早時代遅れなのです。仲間褒めと、暗黙の排除の時代です。

伝統から自己自身を切り離すモダニズムは、体から切り離されてもなお生き長らえる蛇の頭のようなものでしょうか?

●多くの卑近なものが肥大し、多くの些細なものが主役を奪ってしまう。(ボードレール