アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

人間と小説

岡本太郎の父母の思い出を語ったエッセイを集めた『一平 かの子』を読んでますが、ふと気付いたのは、私は小説をほとんど読んでこなかったのだが、これが非常によろしくなかった。なぜなら岡本太郎の言うように「人は生まれながらにして“自分”である」筈が無いのである。 

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岡本太郎が言うように人が生まれながらに「自分」であったなら、人は生まれた直後から自分の言葉を語れなければならない。実際に昆虫は生まれた直後から自分のなすべき事の全てを知っていて、その意味で自分の言葉を生まれながらに持っている。つまり岡本太郎は人間の昆虫化を説いているのである。

人は小説を読んで人になり、人は詩を読んで人となり、哲学書を読んで人となり、宗教書を読んで人となり、科学書を読んで人となり、漫画を読んで人となり、映画を観て人となり、絵画を観て人となり、音楽を聴いて人となり、テレビを見て人となり、人と話して人となり、決して生まれながらに人ではない。

岡本太郎のエッセイに、母に『鮨』と言う小説があると書いてあったので、iPhone青空文庫で読んでみたのだが、全くもって素晴らしい。短編なのですぐ読めます。 

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