アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

認識と模倣

最も単純な認識とは、存在の認識である。例えば最も単純な「眼」を持つであるウニは、光の存在を認識して、光のない方へと移動する。人間の場合も、例えばうつ伏せに寝ている背中に本を乗せられても、「何かを背中に乗せられた」というその存在だけが認識できる。

最も単純な認識とは、最も単純な模倣である。光の存在を感知するだけの感覚器官を持つウニは、光の存在そのものを、自らの環世界において模倣する。人の背中に何かが触れると、何かが触れたという存在そのものが、人の環世界において模倣されるのである。

そしてより精密な認識とは、より精密な模倣が、その生物の環世界において行われることと同意である。素朴な生活世界においても「物事を理解したならば、同じことができなければならない」と言われているように、認識と模倣が同じである事が、理解されているのである。