アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

神と自明

神は存在しない。のであれば何が存在するか?と言えばあらゆるものが自明的に存在するのである。

無宗教」を自称する多くの日本人は、神の存在を自明的に信じることが宗教だと思いなしているが、そのような人こそ自分を含むあらゆる事物の存在を自明的に捉えている。神とは自明性の対義語でもある。

古代ギリシャピュタゴラスが数の不思議を神と錯誤してピュタゴラス教団を結成したように、人間は何でも神と錯誤しうる。神でないものを神と錯誤するのは無知の故であり、無知とは世界認識が何らかの自明性により成立している状態を言う。

あらゆる人工物の意味を捨象し純粋なオブジェの連なりとして観る「非人称芸術」の視点とは即ち「ネコの視点」と同じではないか?すると、便器を逆さまに置くなどしたデュシャンのレディ・メイドの視点とは、ネコの視点ではなかっただろうか?ネコの視点を芸術と錯誤したのがレディ・メイドだったのか?