アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

近代とイデオロギー

ようやく分かってきたのだが、イデオロギーとは近代の産物なのである。つまり近代化によって、伝統的なそれまでの価値観が全否定されると、新しいイデオロギーの構築が必然的に必要になる。

私の非人称芸術が共産主義の影響を受けていたという以前に、そもそもイデオロギーというものが近代の産物なのである。

マキャヴェッリによれば、改革とは原点に回帰することである。すなわち時間が経つと原点から逸れて世の中が乱れるのであり、改革して回帰する必要がある。これに対して近代の改革とは、原点をも含めた過去の全否定であり、そのように白紙還元した上に新たなイデオロギーを構築しようとするのである。

即ち、近代が否定しようとした「古いもの」には二種類があることに留意しなければならない。一つは「古典」であり、もう一つは「古典からの逸脱」である。近代はこの二つを一つの「古いもの」と捉え丸ごと否定する。

近代のイデオロギーは古典を否定しながら実は、古典をさらに遡った文明以前の原始に回帰しようとする。それは『共産党宣言』でマルクスも述べているが、文明以前の原始に人間の本質を見て、日本質的な古典文明を否定して、原始に回帰しようとするのである。

過去に理由があって成立したものを、現在の理由のわからない人々が否定するのは損だとマキャヴェッリは述べているのである。