アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

自然主義と現象学

「自分の気持ち」と「他人の気持ち」は自然主義的には別個のものですが、現象学的には「現象」として同一なのです。

例えば「リンゴとジャガイモという別種のものを天秤にかけ重量を比較するのはナンセンスだ」と考えるのが自然主義です。しかし5キロのリンゴと、5キロのジャガイモとでは、運搬の苦労は同じです。つまり人はあらゆる場面で比較する必要のない膨大な要素に囚われており、それを現象学は指摘するのです。

あるいは同じ5キロのリンゴであれば、一個50円の安物リンゴより、一個500円の高級リンゴの方が運ふ甲斐があります。しかしどちらを運んでも同じ給金を貰うのであれば、運ぶ苦労はどちらも同じです。つまり物事を判断するには様々な要素が絡み合い実に難しいのです。

様々な判断材料を自然主義的に「別種」と捉えるよりも、全ては「現象」という一種のみであると観る方が、判断の精度が上がります。