アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

才能論と予定説

マックス・ヴェーバーが示すカルヴァン派の「予定説」だが、理解のために自分に引き寄せて考えると、例えばアーティストは自分には「才能がある」と、すなわち「選ばれた人間」だと確信するためには実際に優れたと言える作品を作ってそれを証明しなければな…

覚悟と思想

高橋由一の自画像、改めて見るとクソのように下手くそで呆れるが、最近よく分かったのは絵が下手な人は「上手くなろう」という「覚悟」が無いこと。北斎にはその「覚悟」があって死の間際までそれを貫き落とした。由一は覚悟が全然なくて「素材」で誤魔化し…

王と常識

金持ちが金から金を生み出すように、知識から知識を生み出す人がいる。一方で貧乏人が金から金を生み出せないように、知識から知識を生み出せない人がいる。知識から知識が生まれないのは「常識」が邪魔をしているからである。 その人の中で「常識」が知識の…

ニーチェと資本主義

資本主義の「資本」とは単なるお金ではなく「お金を増やすためのお金」である。そして「お金を増やすお金」であるところの資本は金額が幾らでも良いと言うわけではなく、「一定程度以上の大きな額のお金」を指す。だから資本主義とは単なるお金主義ではなく…

ニーチェの言う「強者」の特徴

強者とは、過酷な自然環境を生き延びてきた原始的エリートの末裔である。その遺伝子は厳しい自然環境によって選別される。これに対し弱者とは、本来の自然環境では生きられない、文明成立後に発生した新しく選別された遺伝子を持つ種族である。 強者とは野生…

強者と和解

僧侶はただ一つの大きな危険を知っているだけである。すなわちそれは科学、ー原因と結果という健全な概念である。しかし科学は全体としては幸福な事情の元でのみ栄え、ー「認識する」ためには人は時間を、人は精神を、ありあまるほど持っていなければならな…

戦争と創造

文明は何を生み出したか?と言えば一つには大量の「非創造的なつまらない仕事」である。文明とは数々の「非創造的なつまらない仕事」によって成り立っている。それでは文明内において「創造的な面白い仕事」とは何か?ニーチェ的に言えばその筆頭は「戦争」…

前衛と責任

ニーチェを読みながらの続き。ニーチェやオルテガが言うように、現代は「奴隷」の世の中なのである。奴隷とは何か?それは奴隷の身分から解放されてもなお奴隷であろうとする人間、奴隷から解放されても貴族的な自由を謳歌せず、なおも誰かの奴隷になろうと…

信仰と保留

ニーチェ『反キリスト者』を引き続き読んでいるが、思った以上に難しくて難航している。この難しさは、もしかしてキリスト教そのものの難しさかもしれない。確かにキリスト教は、自分がクリスチャンでもなく、聖書は一応読みましたと言える程度の立場からは…

自分と興味

私達にとって、自己こそ見知らぬ者であらざるを得ない。私達が自らを理解することなどない、私達は自分を他人と間違えざるを得ないのだ。私達には「誰もが自分からもっとも遠い者である」という命題が永遠に当てはまるのだ。私達に自分については「認識者」…

強者と弱者

今読んでいるニーチェがなかなかに分かりにくいのだが、もう一度前提を確認しなければならない。それはニーチェははっきり述べてはいないようだが、ニーチェの言う「強者」と「弱者」の対立は「文明」に固有の問題で、なぜなら弱者は文明成立以前の自然環境…

戦争と幸福

ニーチェが教えてくれるのは、我々が見ている世界はことごとく「逆さま」であるということだが、実際に人間の網膜には重力に対して上下逆さまの像が写っているのであり(それは大判カメラのピントグラスを見ても分かる)それを脳内処理で補正しているのであ…

同情と文明

ニーチェの『反キリスト者』を読みながら書くが、同情とは何か?を考えると文明以前の原始生活において怪我人や病人に同情すると自分の命はもちろん群れ全体の存続が脅かされる危険がある。従って文明以前に「同情」は存在せず、「同情」によって文明が生じ…

理解とコピー

自分が理解したことは自分にしか理解できない。つまり、自分が理解したことを他人に理解させることはできない。同時に他人が理解したことは自分には理解できない。他人が理解したことを自分で理解するには、結局は自分で考えて自分なりに理解し直さなければ…

「超個体」と個人

大半の人間は「つまらない人生」を送る。なぜなら「面白い人生」は常に不安定で、予測不可能な危険に満ち、失敗や死の危険が伴い、自己決定に伴う責任がつきまとう。多くの人はそれらを極力避けようとするから結果として「つまらない人生」を送ることになる…

文明と前提

ようやくニーチェ『道徳の系譜学』を読み終えたが、これは非常に難しい本。そもそも初期仏教とユダヤ/キリスト教を真っ向から否定しており、これを読んですぐに「理解した」と言うような人は、それらの教えから感銘を受けた経験がない可能性があるので、信用…

「勝つための修行」と「戦わなくて済む方法」

引き続きニーチェを読みながら書いているが、天才とはニーチェよれば自分の能力をカテゴリーを超えて拡大しようとする意思のある者、そのための努力をする意思のある者、すなわち未知の領域を切り開く意思のある強者を指す。 文明は必然的に人間に精神病をも…