アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

エキスパートエラー

『人は皆「自分だけは死なない」と思っている -防災オンチの日本人』という本を読んでいます。
http://www.amazon.co.jp/dp/4796645187

人は一人でいると神の声を聞き、大勢でいると他人の声を聞く。つまり一人でいるときは自分の直感に基づき行動し、大勢でいるときは他人を伺いながら何もしないのです。

「エキスパートエラー」というものが存在します。例えばビル火災が起きた際、現場にいない防災センターの「救助に行きますから待機してて下さい」という指示を信じるよりも、生死に関わることは自分の五感で確認した商法に基づき、自分で意思決定して行動し、逃げることが重要なのです。

ユダヤ教の司祭と律法学者がキリストを死刑にしたのも、アテネの議会がソクラテスを死刑にしたのも、エキスパートエラーの際たるものです。時として、エキスパートは自らの保身のため、エラーを生じさせるのです。

認知心理学では知識がないと意識は生まれないとされています。例えば、マニュアルに書かれてない事に対応できないのはこのためです。

パニック過大評価バイアス、というものが存在します。実際にはパニックは簡単には起きないのです。「パニックを恐れて…」は人をバカにした判断にすぎません。

リスク認知は認知的不協和を必然的に伴います。リスクは回避すべきですが、それ以前に人はリスクの認識そのものを回避したがるのです。