アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

デュシャンのフォトモ

世界で最初に「フォトモ」を作ったのは誰か?
と言えば、私が確認した限りではマルセル・デュシャン(Marcel Duchamp、1887- 1968年)なのです。
デュシャン1941年より「トランクの中の箱」(La Boîte-en-valise)というマルチプル(量産芸術)を販売し始めますが、これは自身の作品の複製やミニチュアを箱に詰めた「移動美術館」とも言える作品です。
そしてこの作品の中に「フォトモ」が含まれていることに、私は気付いたのです。

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これは高松市美術館が所蔵する「トランクの中の箱」ですが、この作品そのものは300個以上が制作され、世界中の美術館が持っています。

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さて、この作品の箱底面の中央奥には、デュシャンの『ローズセラヴィよ、なぜくしゃみをしない?』(鳥かごの中に角砂糖状にカットした大理石を入れた作品)のミニチュアがしつらえてありますが、これがなんと、作品写真を切り抜いて立体化した「フォトモ」なのです。

作りは簡単ですが、切り抜いた写真に立体的な折り目を付けてますから、これは間違いなく「フォトモ」です。

もちろん、デュシャンは「フォトモ」という言葉は使ってないし、『トランクの中の箱』についてのどの解説にも、「写真を切り抜いた立体」のことには触れられていません。

私もデュシャンのこの作品について全く知らないまま、自分の「フォトモ」を作っていたのでした。

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デュシャンフォトモを裏側から見たところです。ちょっとピンぼけで解りにくいですが、立体的に起こした写真の裏側が石膏で充填され、形を保つ構造になっています。
ここが私の「フォトモ」と大きく違うところです。

が、「フォトモの裏側をどうするか?」と言う問題は私の中でも最近浮上してますので、この製法を採り入れた「フォトモ」を、9月8日(木)に開催の『逆三角関係展Vol.26』に向けて作ってみようかと思っています。