アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

視覚と動き

知覚についての覚書。動物の知覚は動いている対象物と、動かない環境とをどのようにして判別するのか?動物が自分の体を移動させると、それに連動して視覚情報も変化する。自分の体の動きと、視覚情報の変化が「連動」している場合、その視覚情報は「動かない環境」として認識される。

自分の体と移動と無関係に視覚情報が変化した場合、その変化した部分の視覚情報は「動くもの」として認識される。自分で自分を観察すると分かるのだが、人間の目は絶えず動いている。人間は絶えず目を動かすことで「動かない環境」と「動く対象物」を判別しようとしている。

目を動かしてものを見ることは、手でものの表面を撫でることでその質感を認識することに似ている。手を動かさずにものに触れるだけでは、触感による知覚は生じない。同じように、目は常に動かしていないと「視覚」は成立しない。人間は視覚的にものの表面を撫でながらそのものを認識する。

ところでカエルを観察すると、彼らは目を動かさずにじっと静止していることが多い。この時は実に、カエルには何も見えていないのではないだろうか?しかしカエルの目の前で虫などの獲物が動けば、カエルの視覚情報も動くことになり、そこに視覚が生じる。そしてカエルは獲物を捕らえて食べるのである。