アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

匿名彫刻と非人称芸術

ふと、写真家のベッヒャー夫妻について調べたら「anonyme skulpturen」という写真集があり、文字通りの意味だとこれは私の非人称芸術とほぼ同じで、恥ずかしながら知りませんでした。 http://linkis.com/baumanrarebooks.com/XBByy

私はベッヒャーの写真は知ってましたが、anonymous sculptureすなわち匿名彫刻の概念は知りませんでした。なぜならそもそも私は写真を知らずに生物学や現代思想の知識を採り入れながら写真について考えることで、オリジナリティーを生み出そうとしたからです。

この方法は半分は正しく、半分は間違っていました。ベッヒャーの匿名彫刻は私の非人称芸術と同一ではないですが、かなりの程度似通っており、実質的に私は無自覚的にその影響を受けていたと言えるのです。

一つ興味深いのは、私が提唱していた非人称芸術のコンセプトが、ベッヒャーによる匿名彫刻と極めて類似していることについて、写真会でも美術界でも誰一人として私に指摘してくれなかったことです。これ言うと、糸崎さんが傷付くと思って、みんな気遣ってくれたのでしょうか(笑)

それとも匿名彫刻と非人称芸術の類似性なんて所詮他人事なので誰も興味を持たなかったか、あるいはベッヒャーの匿名彫刻自体をみんなも私と同じように知らなかったか…まぁそれは考えにくいとしても、しかし日本人は押し並べてAとBとを関連づけ系統だって物事を捉えることに興味を持たずそのせいかも知れません。