アート哲学・糸崎公朗blog3.2

写真家・美術家の糸崎公朗がアートと哲学について語ります

デッサンとエンジニアリング

伝統的にエンジニアリングの本質は美術にあったのである。いわゆるエンジニアリングが存在しなかった産業革命以前において、エンジニアリングの本質は一つには美術に存在した。

それが産業革命以後、エンジニアリングの本質はいわゆるエンジニアリングに移行し、これに伴い美術とエンジニアリングとが無関係であるよう錯誤されるようになったのである。

レヴィ=ストロースによると、美術はエンジニアリングとブリコラージュの要素を兼ね備えているが、実際にはそれはいわゆるエンジニアリングも、多くの場合何らかの割合でブリコラージュを含んでいる。しかし現代の少なくとも日本の美術の場合、エンジニアリングの要素が殊に軽んじられ排除されている。

思えば私の場合は、美大浪人時代に通っていた予備校、長野美術専門学校の村田陽先生から、ヨーロッパ仕込みの合理的なデッサンを教わったのだが、それはつまりエンジニアリングだったのである。

アーティストの梅津庸一さんは、アーティストとしての基礎は美術予備校に作られると述べていて、それは極端な見方だとも思ったが、しかし今の美大は基礎を教えないわけで、自分の場合も含めて当たっていると言えるかもしれない。