オルテガによると大衆とは自ら能力を高めるための努力をしない人を指す。なぜそのような人が大量に存在するのか?原始時代の人間は実はエリート集団で無能者は淘汰される。ところが文明時代になって淘汰されるべき無能者でも生き延びられるようにシステムが完備されるようになった。
オルテガによると、現代の大衆の平均的知的水準はそれ以前の時代に比べて格段に向上している。しかし起業して人を雇えるような「突出して優れた人間」の割合はごく少ない。つまり「ごく少数の優れた人間と、大多数の無能者」という比率は、原始時代から現代に至るまで変わりがない。
私は未熟児として生まれたので、現代文明のシステムがなければ生き延びることが出来なかった、と言う負い目がどこかにあったのだが、しかし同じことは私以外の大多数の人びとにも言えるのだ。
現代においてこれだけ人間が増えているのは、原始時代だったら淘汰されるべき弱い人間を生き延びさせるシステムが完備されているからである。